医療法人社団CVIC
大井町心臓クリニック
休診日:水曜、日曜、
祝日、土曜日の午後
〒140-0011 東京都品川区
東大井5丁目2−3 おおい元気館 3F
心臓CT検査
1.心臓CT検査(造影心臓CT検査)
一般的な心臓CT検査は、ヨード造影剤を使用した造影心臓CT検査になります。日常診療で遭遇す る造影心臓CT検査の適応を示します(Table 1)。
これまでに報告されているいくつかの多施設共同研究でも、侵襲的な心臓カテーテル検査と比較して、検査の感度は約85-90%、特異度は約96-98%と報告されています。特徴的なのは、高い陰性的中率(冠動脈狭窄が存在しないことを証明する力)で、約93-100%との報告が多いです。これは、心臓CTで大丈夫であれば、かなりの自信を持って冠動脈疾患が存在しないと言えるということになります。実は心臓を扱う循環器の医者にとって、この断定できるという力は大きな魅力です。もちろん、心臓病ひいては心臓突然死の不安を抱える患者にとっても、「ほぼ間違いなく大丈夫」というコメントがもたらす安心感は非常に大きいと思われます。
この心臓CTの特長を生かして、最近では、急に胸が痛くなり急性心筋梗塞との鑑別が問題となる急性胸痛患者における心臓CTの有用性が注目されています。
米国での1,000人の急性胸痛患者に対する多施設研究から、心臓CTを最初に用いる診断方法の有効性の報告がされています。心臓CTを最初に用いる方法(501人)と心臓CTを用いない従来の診断方法(499人)で比較した結果では、入院の期間、救急室から直接退院の割合ともに心臓CT群で短く、だからといって、退院後に心筋梗塞や心不全が増えたりはしないと報告されています。
このような研究成果からも、急に胸が痛くなった時に、まずは心臓CT検査を受けることが推奨されます。
実際に、左冠動脈の前下行枝という一番重要な枝に高度狭窄病変(今にも閉塞しそうに細くなった部位)が見つかった37歳男性の心臓CTの症例を示します(図14)。
軽度の高血圧と高脂血症のある患者で、長い距離を歩いたときに胸の圧迫される感じと下顎にかけて広がるような痛みを感じるようになり、近くの開業医で狭心症を疑われて、心臓CT検査を受けに紹介で来院されました。
心臓CT画像は様々な表示が可能で、3次元での立体カラー画像(A)や白黒での血管だけを浮き上がらせる画像(B)が表示可能です。左前下行枝の矢印の部位に血管が細くなっているのが見えます。これら3次元画像を元に、冠動脈を全体をカーブをつけながら表示する方法(C)やまっすぐに引き伸ばして表示する(D)ことができます。それにより、まるで手に取るように、血管の細い場所を360度回転させて観察できます。
3次元での矢印に対応する細い場所に、血管が狭くなりどの周囲に動脈硬化性プラークが取り囲んでいるのが見えます。このプラーク蓄積のために血管自体も大きく膨らんでいます。いわゆる不安定プラークに特徴的な、血管の代償性拡大と思われます。最終的な診断は、血管の細い部位の直交断面を切り観察することで分かります(E)。血管内腔はかなり狭くなり、周囲が動脈硬化性プラークにより埋め尽くされているのが分かります。
このように心臓CTの正確な診断には、3Dワークステーションを用いて、様々な画像再構築方法を駆使し多角的に診断することが重要です。
冠動脈ステント治療の進歩とともに、冠動脈ステント植え込み術を受けられた患者も増えています。2016年度の循環器疾患実態調査では、年間23万人の患者がステント治療を受けています。特に、薬剤溶出制ステントの普及により、ステント内再狭窄は劇的に減少し、治療成績は確実に向上しています。そのために、ステント内再狭窄の評価に侵襲的な心臓カテーテル検査ではなく、心臓CT検査が選択されるケースも増加しています。これまでの報告でも、3mm以上の冠動脈ステントでは、冠動脈CTAにて良好な検査成績が得られることが報告されており、ステント内再狭窄評価にも心臓CTが有用であると期待されています(図15)。
まとめとして、心臓CTの特徴、利点と欠点、他の冠動脈撮影が可能な検査との対比を示します(Table 2)。