主に狭心症、心筋梗塞などの冠動脈疾患、不整脈、心臓弁膜症、心筋症、心不全などの心臓に関わる疾患や、大動脈、肺動脈、末梢動脈などの血管に関わる疾患が対象となります(それぞれの疾患リンクへ)。また高血圧・糖尿病・高脂血症・メタボリック症候群など生活習慣病の診断・治療を行い、心臓病や血管病の早期発見や予防を行います。心臓病の主要な危険因子が、これまでの多くの臨床研究より明らかにされています。修正不可能な年齢(高齢ほど起こりやすい)、性別(閉経前の女性には少ない)、家族歴(家族に心臓病の人がいると起こりやすい)とは別に、修正可能な危険因子が知られています。
 

心臓病の主要な危険因子

心臓病の主要な危険因子


 
2002年に実施された52カ国、3万人を対象とした大規模臨床試験(INTERHEART研究)があります。1 研究では、9つの修正可能な危険因子が、それぞれどれ位心筋梗塞の発症に関与しているのかを検討しています。それぞれの因子の関与の度合いには個人差がありますが、重要なメッセージは、「心筋梗塞の90%は9つの修正可能な危険因子で起こる」という事実です。これら9つの危険因子を出来る限り修正することで、心臓病の予防は可能になると考えられています。
 

INTERHEART研究*

心筋梗塞の90%は9つの修正可能な危険因子で起こる。

INTERHEART研究*


 
以下に代表的な循環器疾患である、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)、不整脈、心筋症、弁膜症、心不全の診断方法に関して概説します。(病気ごとのSectionに分けても良いと思います)
 

1.冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)

心臓の筋肉は常に動き続けるために、常に酸素をたくさん含んだ血液を必要とします。心臓の筋肉に十分な血液を送るために、心臓の筋肉を取り巻くように血管が走っています。正常では、大きく分けて3本(右に1本:右冠動脈、左に2本:左前下行枝、左回旋枝)あり、冠状動脈(冠動脈)と呼ばれています。
 

冠動脈

冠動脈


これら冠動脈に動脈硬化が基礎となり、狭窄や閉塞を来たし、心臓の筋肉が血液不足となり虚血状態となり、進行すると壊死していく病気を冠動脈疾患と呼びます。

冠動脈の動脈硬化

冠動脈の動脈硬化

心筋梗塞のメカニズム

心筋梗塞のメカニズム


 
冠動脈疾患の正確な診断には、大きく分けて2つの重要な情報が必要です(図1)。1つは、冠動脈の解剖学的(形態)情報です。すなわち、3本ある人間の冠動脈の中で、どの血管のどの部位が細くなっている(狭窄している)、もしくは詰まっている(閉塞している)のかという情報になります。これには、実際に冠動脈の状態を映し出してみるしかなく、心臓CT、心臓MRI、心臓カテーテル検査といった検査が必要です。もう1つは機能的情報で、冠動脈の狭窄がどれぐらい心筋の血流低下(心筋虚血)に影響するのかという検査になります。心臓MRI、心筋シンチ、冠血流予備量比などの検査が該当します。それぞれ、身体に負担の大きい侵襲的検査と身体に負担の小さい非侵襲的検査に分けられます。個々の患者の病気の重症度、緊急度にしたがって、これら検査を組み合わせて実施されています。
 

図1.冠動脈疾患の検査

図1.冠動脈疾患の検査


 
実際の診断では、症状や心電図検査、血液検査から冠動脈疾患を疑い、運動負荷心電図を実施されます(図2)。
 

冠動脈疾患の診断

冠動脈疾患の診断


 
その後、冠動脈が実際に狭くなっているのかを直接検査することになります。冠動脈疾患が強く疑われる人は、心臓カテーテル検査へ進みます。中等度ないしは判定不能の場合には、最近では心臓CTが実施されるケースが増えています。2016年度の日本循環器病学会の循環器疾患実態調査でも、冠動脈造影検査は2012年約49万件からほぼ横ばいですが、冠動脈CT検査は、2012年約34万件から2016年約43万件と4年間で約26%と急速に増加しています。これらの数字からも、如何に冠動脈狭窄の診断が重要視されているのかが理解できると思います。
 

心臓カテーテル(冠動脈造影)検査と冠動脈CT検査の推移

心臓カテーテル(冠動脈造影)検査と冠動脈CT検査の推移


 
冠動脈狭窄の存在は非常に重要な情報であり、従来はこの解剖学的情報が重要視され、冠動脈が細い(冠動脈狭窄)かどうかに基づいて診断し、治療方針を決めてきました。
しかし、冠動脈狭窄に対する治療の目標が心筋血流の十分な確保であることを考えると、機能的検査は診断及び治療方針決定に非常に重要な意味を持つと考えられます。これまでの動物実験などの研究から、一般的に狭窄率が70-75%以上にならなければ、血流は低下しないと考えられています(図3)。2 グラフにある直線の周りの帯から分かるように、冠動脈狭窄と心筋虚血の出現には個体間でのばらつきがあると考えられ、狭窄率と心筋虚血にはある一定の幅が生じていることが知られています。
 

心筋虚血と冠動脈狭窄の関係

心筋虚血と冠動脈狭窄の関係


 
最近になり、いくつかの臨床研究から、冠動脈疾患の治療方針決定には、実際に冠動脈が細いだけではなく、心筋虚血を生じるのかどうかが重要であるという報告が出てきました。3 これら研究に基づき、冠動脈狭窄に対する治療方針を決めるには、今にも閉塞しそうに明らかに高度狭窄である場合を除いては、ストレスがかかった時に心筋虚血を生じる可能性があるのかを調べる必要性があると考えられるようになってきています(図2)。逆に、冠動脈狭窄が心筋虚血を生じない場合には、狭窄に対する冠動脈ステント治療やバルーン治療ではなく、狭心症の薬物療法でも良好な成績が得られることが明らかになっています。4 冠動脈疾患の診断には、解剖学的情報を正確に評価し、次に必要に応じて心筋虚血の評価をすることが重要です。治療目標としては、「心筋を守る」ことが最重要であり、そのためには冠動脈がどのような状態であるのかを、形態的に機能的に正確に診断することが重要と考えられています。

実際の症例を示します。74歳女性で軽度の労作時の胸部圧迫感(胸の重い感じ)を主訴に来院されました。高血圧、高脂血症といった冠動脈危険因子を持ち、家族歴は8人兄弟姉妹の中で5人が心筋梗塞もしくは狭心症で、5人中2人は冠動脈バイパス手術を受けておられるという濃厚な家族歴でした。症状と冠動脈危険因子より、冠動脈病変を疑い、心臓CT検査を行いました。左冠動脈の前下行枝の起始部(根もとに近い部分)に高度狭窄病変を認めました(図)。詳細解析でも、細くなった部位に大きな動脈硬化性プラークが存在しているのが分かります。大学病院での心臓カテーテル検査では、心臓CTで同定された部位と同じ部位に冠動脈狭窄が認められました。このように、心臓CTや心臓MRIは冠動脈病変の進行した患者においても比較的安全に施行でき,しかも短時間で施行できることが最大の強みです。さらに,冠動脈病変に対する心臓CT、心臓MRIの陰性的中率は約98%ときわめて高いことから,海外ではCTを急性胸痛患者の最初の検査として利用しようという試みもなされています。米国マサチューセッツ総合病院の研究では,急性胸痛のために救命救急室(ER)を訪れた患者を対象に,通常の検査手順を行った場合と心臓CTを利用した検査手順を行った場合では、病院にいる時間は短縮され、その後の心臓のイベントも増加なく、費用も同程度であったと報告しています。5 もちろん心臓CTには放射線被曝や合併症のリスクもあり,また米国と日本では医療事情も異なるため,そのままこの結果を日本で当てはめることはできません。しかし、今後の冠動脈疾患の診断の大きな方向性を知るには非常に参考になる結果と思われます。
 

心臓CTでの3D画像

心臓CTでの3D画像

心臓CTでの狭窄病変

心臓CTでの狭窄病変


また、動脈硬化による狭窄病変(細くなっている様子)やプラークが蓄積している様子を画像でみると、最もよく聞かれる質問があります。
「薬で溶けますか?」
残念ながら、長い年月をかけて蓄積した動脈硬化病変が、溶けてなくなるような飲み薬はありません。但し、適切な管理で進行を抑える事は可能です。そのためにも早期に冠動脈疾患を診断することが重要です。
 

参考資料:Athero_hanei_05_Medical

2.不整脈

不整脈の診断はまずは安静時心電図にてスクリーニングを行います。但し、狭心症の場合と同様に、不整脈の出現していないときには、正常心電図と診断される場合もあります。また、必ずしも症状を伴うわけでもなく、そのためホルター心電図検査は、ほぼ全例で必要となります。
症状としては、大きく分けると以下の3つが代表的です。

1.失神 「何もしていないのに突然ふうっとする」「急に意識がなくなる。つまり失神する」タイプは最も危険です。この場合は、一時的に心臓が止まっているか、または極端な頻脈が起こっている可能性があります。しばしば脳血管疾患と間違うことがありますが、失神症状が出た場合は、不整脈の可能性があることを念頭に置き、できるだけ早く病院を受診して、その原因を調べてもらい、治療を始める必要があります。
2.息切れ 「脈拍数が少なくなり(1分間40以下)、体を動かす時に、強い息切れを感じる」ケース、この時は脈が遅くなりすぎて、心不全を起こしている可能性があります。この場合、ペースメーカー治療が必要になることがあります。
3.動悸 不整脈を疑う症状として最も多い症状の一つで、突然始まる動悸です。この場合、頻脈が起こっていると考えてよく、「脈拍数多くなり(1分間に100以上)、突然始まり、突然止まる」ものは、病的な頻脈(頻拍)と考えられます。とくに、この「頻拍」が心臓の下の部屋である心室から出ている場合は要注意です。心室頻拍という不整脈である場合には、心室細動というさらに恐ろしい不整脈に移行し、心停止を起こす場合があります。上の部屋から出ている上室性不整脈としては、心房細動があり、心臓に血液の塊である血栓を作り、脳梗塞を引き起こす危険性があります。

不整脈の種類には、大きく分けて3つの種類があります。脈の速くなる「頻脈」、遅くなる「徐脈」、さらに、脈が飛ぶ「期外収縮」です。不整脈といわれたときには、この3種類の中でどれに相当するのかが重要になります。「頻脈」は電気信号が異常に早くつくられるか、異常な電気信号の通り道ができて電気信号の迂回路が起こるために発生します。頻脈をきたす病態には、心房細動、発作性上室性頻拍、心室頻拍、心室細動、WPW症候群などがあります。「徐脈」は心臓の中で電気信号がつくられなくなったり、途中でストップしたりするために起こります。徐脈をきたす病態として、洞不全症候群、房室ブロックがあります。また、「期外収縮」は本来、電気信号の発生する場所以外から通常よりも早めに刺激が出てくるために起こる現象です。この刺激が心臓の上の部屋である心房から出る場合には上室性期外収縮、心臓の下の部屋である心室から出る場合は心室性期外収縮と呼ばれます。さらに、これら3つのタイプ以外に、心臓の中の電気の伝わり方に異常がある、心室内伝道障害として、右脚ブロックや左脚ブロックがあります。

不整脈の原因には、大きく分けて、心臓自体に異常があり不整脈を呈する場合(冠動脈疾患、心筋症、心筋炎、心不全など)と心臓の中の刺激伝道系(電気回路)に異常があるために不整脈を呈する場合があります。心臓自体に異常がある場合には、各疾患の除外診断が必要で、心エコー検査で心臓の動きや弁の状態を把握して、心臓CTや心臓MRIなどの高度な画像診断検査が必要になる場合があります。電気回路の異常の場合には、カテーテルを用いた侵襲的な電気生理学的検査が必要になる場合が多いです。
 

 

3.心筋症

心筋症には大きく分けて、拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症の3つがあります。6 全ての心筋症は、病気の初期段階では無症状のことが多く、突然死の危険性もある病態です。

1.拡張型心筋症
DCM
(Dilated cardiomyopathy)
心臓の特に左室壁(心筋)が薄くなり、左室拡大を認め、同時に左室のびまん性収縮障害(血液を押し出すポンプの力が低下)を伴う状態。うっ血性心不全をおこしやすい。日本での有病率14.0人/10万人。
2.肥大型心筋症
HCM
(Hypertrophic cardiomyopathy)
心筋の壁が肥厚し、拡張障害、左室流出路閉塞を起こす。日本での有病率17.3/10万人。
3.拘束型心筋症
RCM
(Restrictive cardiomyopathy)
心筋の壁が硬くなり、拡張障害を起こす。左室肥大を伴わない。日本での有病率0.2/10万人
拘束型心筋症は非常に少ないので、拡張型心筋症と肥大型心筋症の2つの診断に関して説明します(図)。

 

心筋症の分類

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1)拡張型心筋症(DCM)

拡張型心筋症の診断・検査の流れを示します(図)。拡張型心筋症は心不全の症状を呈して発症する事が多い疾患です。具体的には、呼吸困難や浮腫などの血流うっ滞による症状と全身倦怠感、易疲労感などの心臓のポンプ機能低下による症状があります。「なんとなくだるい。」などというような症状が多い印象があります。これらの症状から心不全を疑い、段階的に検査の流れを組み立てて行きます。拡張型心筋症に特徴的な心電図所見はなく、胸部X線検査では心不全に特徴的な心拡大や肺うっ血が見られることがあります。やはり重要なのは、実際に心臓の動きや大きさを見る心エコー検査になります。拡張型心筋症の診断には、左室収縮不全を呈し、心不全の症状で発症する様々な疾患を除外する必要性があります。そのためには、心エコー検査で心室内腔拡大のパターンやびまん性の壁運動異常を検出する事は非常に重要です。心臓CT検査は心筋症の検査としては有用性が低く、心筋虚血を基礎に類似した病態を呈する虚血性心筋症の除外診断に用いることがほとんどです。心筋シンチも、拡張型心筋症の診断に決定的な所見は無いが、病気の原因や診断の補助として利用されることが多いです。
 
拡張型心筋症の診断

拡張型心筋症の診断


 
一方で心臓MRIは、1)シネMRIによる心機能評価、2)遅延造影MRIによる他の心筋疾患との鑑別、3)重症度の評価、に非常に有用です(図)。拡張型心筋症の患者の約40%で遅延造影MRI陽性と報告されています。7 特徴的な心臓の筋肉の中にすじの入ったような造影所見を示します。また、遅延造影MRI陽性の拡張型心筋症患者は、生命予後不良と報告されており、重症度と密接に関連すると考えられています。8 近年は冠動脈MRAの技術も向上し、MRIで冠動脈狭窄病変の検出も可能となっており、これらを組み合わせた心臓MRI検査を用いると、拡張型心筋症のほかの虚血性心筋症との鑑別には非常に有用と思われます。9
 

拡張型心筋症の心臓MRI:左室機能

拡張型心筋症の心臓MRI:左室機能

拡張型心筋症の心臓MRI:遅延造影

拡張型心筋症の心臓MRI:遅延造影


 

2)肥大型心筋症(HCM)

肥大型心筋症は、問診、診察、安静時心電図、胸部X線検査にて肥大型心筋症を疑います。しかし、実際の肥大の程度は、やはり心臓を直接見なければ診断できません。心エコー検査は非常に重要な位置を占めています(図)。心エコー検査でほとんどの肥大型心筋症は診断可能です。但し、肥大型心筋症の治療や管理となると、心エコー以外の情報が必要です。特に突然死が問題となりますが、突然死の危険因子を見ると、不整脈や心臓肥大の正確な把握が重要になることが分かります。24時間ホルター心電図、運動負荷心電図検査、心エコー検査、心臓MRIなどの検査が重要視されます(図)。20111年に改定されたアメリカ心臓病学会のガイドラインでは、特に心臓MRI検査は肥大型心筋症の突然死予測に非常に重要な検査と位置づけられています。10 心臓MRIでは心臓肥大の程度を最も正確に測定することが可能です。また、ガドリニウム造影剤を用いた造影MRI検査を行うと、遅延造影と呼ばれる肥大により傷害を受けた心筋へ造影剤の染み込む様子が観察されます(図)。肥大型心筋症では、特徴的な場所に造影剤が染み込んで行きます。これまでの研究で、遅延造影陽性の所見は、肥大型心筋症の危険な不整脈の発生や生命予後とも関連することが明らかになっています。11


 

4.弁膜症

心臓は4つの部屋に分かれていて、それぞれの部屋は血液の流れが一定方向になるように(逆流しないように)弁で調節されています。それぞれの部屋に逆流防止弁が付いていると考えてもよいです。心臓にあるこれらの弁に障害が起き、本来の役割を果たせなくなった状態を「弁膜症」といいます。弁の開きが悪くなり血液の流れが妨げられる「狭窄」と、弁の閉じ方が不完全なために血液が逆流してしまう「閉鎖不全」があります。心臓にある4つの弁のうち、「大動脈弁」と「僧帽弁」に最も多く起こる疾患です。
弁膜症は軽症の間はほとんど無症状であり、検診の際の心雑音で初めて見つかることが多いです。徐々に進行すると、動悸や息切れ、疲れやすい、胸痛、呼吸困難などの症状が出てきます。しかし、症状を呈するほどの弁膜症が、心雑音を伴わない事は珍しいです。弁膜症は、はじめは弁という一部分の病気ですが、進行すると心筋(心臓を動かしている筋肉)という心臓全体の病気になります。そのような状態になると、いくら一部分である弁を取り換えても心筋の障害は回復せず、心臓は元通りに働くことができなくなります。早期に診断を受けて、心筋の障害が進行する前に治療をすることが非常に大切です。胸部X線検査、心電図検査、血液検査などが行われますが、最も有効な検査は心エコー検査です。特に、カラードップラーという手法で、心臓の弁を通過する血流を綺麗に表示することが出来ます。また、血流の速さを計測することで、弁膜症の重症度がよく分かります。最近では、3Dエコーも登場し、弁の状態を立体的に把握できるようになっています。弁膜症に関しては、心エコー検査が最も感度が高いと考えられています。心雑音があるといわれた方は、ぜひ一度、心エコー検査を受けることが重要です。心エコー検査は痛くもなく、それほど手間のかかる検査でもないので、経過を追うのにも最適の方法といえます。
 
弁膜症の診断

弁膜症の診断


 

5.心不全

まず始めに、心不全とは病態(症候)であり、疾患名ではありません。心臓の様々な障害により心臓のポンプ機能が低下し、心拍出量の低下や末梢循環不全(各臓器に十分な酸素を送ることが出来ない状態)、肺うっ血や静脈うっ血をきたす病態である。うっ血が主体となることが多く、うっ血性心不全とも呼ばれています。原因となる疾患は様々で、ほとんど全ての心疾患が心不全に至る可能性を持つと考えて間違いありません。心不全では、動脈を通じての全身への血液供給や静脈から心臓への血液の汲み上げが障害されるため、疲れやすい、顔・下肢がむくむ、食欲がなくなる、むくみを伴う突然の体重増加、夜間就寝中の呼吸困難などの症状がおこります。また、多くの場合、肺に血液が滞り、肺での酸素交換が障害され、軽作業でも息切れを感じます。
心不全は起こり方や進行の速度により急性心不全、慢性心不全に分けられます。急性心不全は急に症状が起こる、たとえば不整脈や急性心筋梗塞、心筋炎などの疾患を含みます。慢性心不全は徐々に心機能が悪化する心筋症などが代表疾患です。また、心不全はさまざまな心臓疾患の病状の進行によりおこる終末像であり、生命に関わる疾患の一つです。原因により心臓の機能を完全に回復することが困難な場合がありますが、治療により症状やQOL(生活の質)、生命予後(寿命)を改善させることができます。心不全の診断のため、心臓の収縮能・拡張能など心臓の機能を直接検査するものと、合併する病状や今後の心不全の進行状況を評価するための以下のような検査があります(図)。
 
心不全の診断

心不全の診断


 

1.採血 ①一般採血:
貧血は心不全の原因として重要です。BUNやクレアチニンといった腎機能は心不全の悪化因子として重要です。また、利尿剤という治療薬に対する反応も推測可能です。AST, ALTやビリルビンといった肝機能は、肝臓に心不全に伴ううっ血が及んでいるかを推測可能です。

②BNP:
心不全に特徴的な採血マーカーとしてBNPがあります。心不全の初期診断に感度が高いだけではなく、心不全の治療効果の判定、慢性期の管理指標としても利用されつつあります。高値であれば心不全が疑われます。

2.胸部X線検査
(大井町心臓クリニックでは実施できません)
心臓の大きさが大きくなったり、肺に血液がたまる肺うっ血、胸に水が溜まる胸水等が見られます。
3.安静時心電図 心不全では多くの場合心電図の異常を伴うことが多いです。不整脈や冠動脈狭窄による心筋虚血を検査するために実施されます。
4.心エコー検査 心不全の検査では必ず実施される重要な検査です。心臓の動きが弱くなっている状態や心臓の大きさが大きいことが正確に診断できます。
5.心臓CT 心不全の原因として冠動脈疾患を疑う場合に実施されます。冠動脈の狭くなっていることが心不全の原因であれば、心不全の治療とともに冠動脈の治療を行うことが再発予防のためにも重要です。
6.心臓MRI 心不全の原因となる病気を見つけるために実施されます。冠動脈以外に、心臓の筋肉(心筋)の情報を多く得ることが出来るために、心不全の原因となる疾患を調べるために非常に有用です。通常は、造影剤を用いた造影心臓MRI検査として実施されます。
7.心臓カテーテル検査
(大井町心臓クリニックでは実施できません)
心不全の原因を調べるために冠動脈の状態を検査したり、心筋の組織を実際に採取する心筋生検の目的のために実施されます。心不全の場合には、心臓のそれぞれの部屋に負荷がどれぐらいかかっているのかという情報や肺うっ血がどれぐらいの重症度なのかを調べるためにも実施されます。
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